RENDOの靴は仕上げの工程として、ウエルト(アッパーの底面から張り出した細革部分)にギザギザの模様を「後目付け」で付けています。
工場で量産される既製靴では、「先目付け」(事前にウエルトパーツに模様をつけておく)と「後目付け」(出来上がった靴に仕上げで模様を入れる)の2通りの方法があります。
数年前、海外の工場を視察した際、仕上げの工程で出来上がった靴に機械で目付けを入れていました。くっきりギザ模様の入った靴は、先目付けよりはるかに見栄えがよく、感銘したのを覚えています。その時から、自ら手がける製品でいつか再現してみたいと思うようになりました。
しかし、今回私達の依頼している工場の規格では、先目付けが標準とのこと。また後目付けをする機械の設備はなく、「手作業で出来ないことはないが一足づつの繊細な作業を既存の流れに組み込むことは、非常に難しい。」とのお答えでした。
「一つ手間をかけてやると一つ良い物が出来あがる。」私の師匠の教えです。さらに良い物をつくるため、また他との違いを表現するため、工場側に無理を言って、生産の途中段階で靴を一度アトリエに戻してもらい一足づつ自分たちの手で目付けを入れることにしました。
適度に熱した「車コテ(ウィール)」と呼ばれる工具で目付けをします。職人さんにのもとへ出向き、持ち方、角度、温度などを学び、実際に何足も何足も練習を行いました。靴を仕上げるほんの一部ではありますが、この工程まで綺麗に作られた靴を傷つけないように注意を払い作業をします。また、職人さんの仕事に敬意を払う作業でもあります。